takegrigriの今昔物語

団塊世代のじじぃが昭和時代から見てきたことを書いています

ハンバーグとハンバーガー

もう40数年ぐらい前からハンバーグもハンバーガーも日本人にはなじみのある食べ物ですが、僕が高校生時代(1964年~1967年)以前ではそれほど一般的な食べ物ではありませんでした。
歌手の菅原洋一がテレビ番組「夜のヒットスタジオ」の司会者の前田武彦からハンバーグというあだ名をつけられたとき、僕はハンバーグがどういう食べ物であるか知りませんでした。それは、母親がそのようなおしゃれな料理を作ることができないこと、大学時代僕が貧乏学生で学食だけで三食を食べていたことが理由です。学生時代は地方都市にいましたが、おそらくその地方でも普通のレストランではハンバーグもメニューにあったのではないかと思います。

1970年か71年だったと思いますが、大学の学食にハンバーグ定食が登場しました。通常の昼の定食が120円だったのですが、ハンバーグ定食はその倍の240円でした。ハンバーグというものを一度食べてみたくて、自分の誕生日に一人でハンバーグ定食を注文して食べてみました。普段は友達と一緒に食べるのですが、一人だけハンバーグ定食を食べると友達にからかわれそうなので時間を少しずらして一人で食べました。
出てきたハンバーグは楕円形に形成された黒焦げのミンチ肉で、味はなく、食感はパサパサしておりとても美味しいとは思えませんでした。サラダがついていたのですがそのドレッシングが口に合ったのが唯一の救いでした。こんなもので昼の定食の2倍の金をとるのかと腹が立ちました。
こんなものをどうしてテレビなんかで美味しい食べ物として話をしているか不思議でした。
テレビなどではハンバーグは美味しいという前提で話をしているので、ひょっとしてこのとき食べたハンバーグは調理をする人が何かを間違えて失敗したものではなかったのかと思うようになり、半年後ぐらいにもう一度ハンバーグ定食を学食で食べましたが、やはり出てきたものはパサパサで味のない黒焦げのミンチ肉でした。
これで、僕はハンバーグというものは美味しくないものだ、これを食べるのはお金の無駄だと思うようになりました。

社会人になって、E君(ハイセイコー中山競馬場まで一緒に見に行った友人)が「ハンバーグの美味しい店があるから食べに行かないか」と誘ってきました。E君は僕と同じ技術職で別の職場にいましたが入社時の研修所時代から気の合う友達でした。
僕は学生時代の記憶からハンバーグは美味しくないものと思っていましたが、東京の店で出すハンバーグを食べてみたいとも思いました。
こうして僕はE君に案内されて銀座のA店に行きました。1974年ごろだったと思います。
A店で食べたハンバーグは黒焦げではなく、ふっくらとしていて、そして僕の予想をはるかに超えて美味しいものでした。驚きました。ハンバーグってこんなに美味しいものなんだ、学食で食べたハンバーグは何だったのかと思いました。
A店のハンバーグ定食は1974年当時で980円でした。当時と現在の初任給比でいえば3~4倍になるので現在では約3000~4000円ぐらいの感覚でしょうか。僕の安月給では頻繁には食べに行けませんでしたが、美味しかったのでその後一人でもう一度食べに行きました。

結婚して、妻と一緒にA店のハンバーグ定食を食べに行きましたが、妻も本当においしいと喜んでくれました。
それから何年かたって給料が少し上がったころ、A店のハンバーグ定食を食べたくなって妻と一緒にA店を訪れましたが別の店になっていました。
美味しいと思っていた店でしたが、なぜやめてしまったのか不思議でしたし、残念でした。

一方、ハンバーガーは、その存在自体は僕の中学生時代(1961年~1964年)にテレビで放映されていた「ポパイ」のアニメで知っていました。「ポパイ」の中に登場するハンバーガー大好きおじさん「ウィンピー」は常に片手にハンバーガーをもっていて、あまり表情を変えずに食べているのでそれほど美味しいものではないのではないかと思っていました。このころは僕の周辺でハンバーガーを売っているところもなく、どんな食べ物なんだろうと想像するしかありませんでした。

僕が初めてハンバーガーを食べたのは上京して社会人となってからです。1974、5年頃だと思いますが、銀座の歩行者天国に行ったときに三越の1階にあるマクドナルドでチーズバーガーを買って歩行者天国の中を歩きながら食べました。味はA店でハンバーグを食べたときほどの驚きはなく、あぁこういう味かという感想でした。ただ、中学生時代からずっと想像していたハンバーガーをやっと食べることができたという実感が湧きました。
マクドナルドの銀座店は三越の1階の外側にあり道路に面していましたが、三越のお客がマクドナルドに隣接するデパートのドアを開ける度にハンバーガーの肉が焼けたにおいが三越店内に入り込み、1階はハンバーガーのにおいが充満していました。しかも1階のそのドア近くには婦人服売り場があって、肉を焼いたにおいが展示してある婦人服に付かないのか他人事ながら心配になりました。


あれから40数年経ちその間いろいろなハンバーグやハンバーガーを食べましたが、味の流行は時代に合わせ少しずつ変化してきているようです。また自分も歳を取って好みも変わってきたと思いますが、今あのA店のハンバーグを食べたらどういう感想になるのかと想像するときがあります。